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大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

九州学院を分析する② 団体戦の戦い方

九州学院は「チーム」で勝つ。彼らの団体戦における戦い方は先鋒から大将まで、一つのストーリーで繋がっている。単純に勝者数が多ければ勝ちとなるのが団体戦ではあるが、そこには米田監督が丹念に練り上げた物語があり、選手たちも監督の考えをしっかり理解した上で戦っているのだ。米田監督ほど団体戦を熟知した監督はいないであろう。そして、選手達は忠実に決め事を守り結果を残す「必殺仕事人」のように私には映る。では、彼らはどうしてこれほどの結果を残すことが出来るのか。また、他校とは一線を画す九学のオリジナリティについて解説したい。

 

 

九学・団体戦の鉄則

①引き分けは「勝ち」

団体戦というものは結果として相手より勝者数が多ければ勝ちである。そこに、「個人的にこいつには勝ちたい」というワガママは許されない。あくまでチームとして勝てばよいのだ。九学の選手にそのようなセルフィッシュな戦い方をする選手はいない。「自分は引き分けてもチームとしては絶対勝てる」と彼らは考えている。特に近年は山田選手や槌田選手など圧倒的な実力を誇る選手を大将に控えた上に、先鋒から副将まで一切弱点のない布陣を揃えるのが九州学院だ。5人いれば誰かは確実に勝つことが出来る。そして、ここでポイントとなるのが、彼らは、引き分けることは多くても負けることはかなり少ないということだ。団体戦において、1人負けるとその分は誰かが取り返さなければならなくなり、チームとして厳しい状況に追い込まれてしまう。という意味では、「勝つか負けるかどちらか」の剣道をする選手は団体戦では使いにくい。例えば10回試合して、「勝ち・負け・引き分け」の比率が「7:3:0」の選手がいたとしよう。一見優秀な選手に見えるが、このような選手は団体戦ではダメだ。大事な試合で「3」が来る可能性も大いにあるからだ。それよりも理想的なのは10回試合して「勝ち・負け・引き分け」が「4:1:5」のように、「9割方、引き分け以上に抑えてくれる」という選手が団体戦における優秀な選手だ。そういう選手を揃えると団体戦でチームとして負けることはほぼ無くなるからだ。九学にはそのような選手が揃っている。というより、そのような試合をするよう米田監督に徹底的に教え込まれている。頭にも体にも「チームのため」の戦い方が染み付いているのだ。

 

②粘っこいディフェンス

九学が他の強豪校とは一線を画すのが、その「ディフェンス力」だ。正直に言って、高輪でも桐蔭でも、こと「ディフェンス」に関しては九学に完全に遅れを取っていると思う。派手な攻撃に隠れがちになっているが、守るべきところは守って、丁寧に丁寧に泥臭く戦うのが九州学院だ。そして、それこそが九学を特別たらしめていると私は思っている。特に、一本取った後の戦いぶりはどの強豪校の試合を見るよりも勉強になる。一本取った後のセオリーは「無理はしないこと」である。じっくり時間を使って一本勝ちでよいのだ。残りの時間を消化する方法としては、「コテ打ちを多用して、なるべく鍔迫り合いに持ち込む」「相手が引き技を打った後、追いメンを打って再び鍔迫り合いに持ち込む」「中間での攻防は避けて間合いを切る、もしくはくっ付いて危険を避ける」といった方法だ。そうしたとき、相手の心理はどうだろう。誰もが容易に推測できると思う。「クソッ、打てねぇ」「打つとこねぇ」「何か思い切った技を・・」相手は完全にイライラモードだ。そして、攻めが雑になる。雑な攻めから単純な飛び込みメンにでも行こうとするものなら出ゴテや抜きドウの餌食となり、勝負あり。または、無理矢理鍔迫り合いを解消しようと離れた瞬間に引きメンを食らって、勝負あり。非常にしたたかであり、やりづらい、相手からしてみれば一番嫌な相手が九州学院なのだ。

 

③最強の大将

内村良一、〆一司、西村英久、山田凌平、槌田祐勢 etc・・・。九学の大将は毎年、その学年の剣道界を代表する選手が務める。「九学の大将≒日本一強い男」と表しても良いと思う。近年の山田選手や槌田選手を見たら顕著だと思うのだが、米田監督は大将に関しては他の選手と別の育て方をしているのではないかと感じる。剣道が他の選手とはまるで違う。彼らの剣道を見ていると、「自分は絶対に勝てる。自分の剣道を貫く」という確固とした自信を感じる。そして、彼ら九学の大将は、常に一足一刀の間合いで構えて真っ向勝負する。どんな場面でも絶大な信頼感を持つ大将がそこにはいる。監督もチームも大将と心中する、それぐらいの熱い気持ちと太い信頼関係を感じる。九学は先鋒から副将までのメンツも日本一だと思う。とは言え、運も大きく関わる剣道という競技、必ず大将戦になる時が来る。しかし、大将には日本一強い男が控えているのだ。こんなチームには勝てない。