読むだけで強くなれる剣道ブログ

大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

センスと頭脳を併せ持った秀才・梅ヶ谷翔

梅ケ谷翔。現在、剣道会で最も注目される選手の一人である。戦績は玉竜旗優勝、学生選手権優勝(1年で!)、全日本選手権3位(大学2年時・20歳!)など。

 

私が初めて彼の存在を知ったのはやはり、玉竜旗での活躍である。そのスピードで対戦相手をバサバサと秒殺し続けるyoutubeでの動画だ。正直最初は、高校生によくいるスピード型の選手が、大会中、のりにのって大活躍したんだなーぐらいに思っていた。ところが、その後の一年での学生選手権優勝である。彼は普通の選手ではないというのを感じ、それからは彼の剣道を細かくチェックするようにした。今ではかなり彼の剣道が分かってきたのだが、いやいや本当に凄い選手だと感じざるを得ない。彼の場合、動体視力や瞬発力など、ポテンシャルが高すぎて、普通の剣士がまるまる彼の剣道を真似することはおすすめしないが、どうしても彼の凄さ、彼の剣道の長所を紹介したいので、今回記事を書いた。

 

まずは彼の試合を動画でご覧頂きたい。↓

www.youtube.com

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彼の剣道はなぜ魅力的なのか。

私はよくある「どっしり構えて中心を張っただけ」のような剣道が嫌いだ(勿論、美しい剣道プラス工夫ある打突、試合運びを見せる選手は肯定する)。なぜなら、そのような剣道をする人というのは大して剣道のことを理屈で考えてないし、見た目だけで何となく剣道をしている人が多いからだ。なので個人的な好みを言えば、宮崎正裕選手や内村良一選手、チームで言えば九州学院や中央大学のような剣道が好きだ。例えば、国士舘や筑波の選手が垂れネームを隠して戦っても、強いのは分かるがどこの大学が試合しているのかはよく分からないと思う。しかし、中大なら分かる。選手全員が個性的で、各個人の長所を遺憾なく発揮して、多彩な技を見せてくれるからだ。梅ヶ谷選手に関して言えば、「よくある」剣道とは全く違い、スピードや技で魅せる選手だ。試合運びも狡猾で、「勝つため」のノウハウが詰まったような剣道をする。その合理的で頭脳的な剣道が個人的には大好きなのだ。

話が脱線してきたので元に戻す。まず、彼は身体能力が抜群に高い。引き技を打った後の引きの速さは超高速で、前に出る技も遠間からのメンでもぐいっと伸びる。スピードは天下一品で、打ち合いで右に出るものはいない。そして何より、小柄で体重もそこまで無いように見えるが、パワーもかなりある。大柄な選手にも絶対に当たり負けせず、逆に鍔迫り合いでは押して振ってガンガン崩す。スピードに関しては天性のものだと思うが、パワーに関しては大学に入ってかなり増しているように見受けられる。雑誌の中でもウエイトトレーニングをかなりやっていると彼は述べていたが、その効果がはっきりと表れている。剣道という競技において、ベストな体型とはどういうものか、という答えはまだ一般的には出てないと思う。全日本選手権を見ても、普通に太っている人もいれば明らかに細い人もいたりする。個人的な考えでは、十分な筋力があり、脂肪が少なく動きにキレがあるのが最適な体型だと考えている。彼はおそらくそのような肉体を保持している。体脂肪率10%未満で脂肪が一切無く、十分な筋肉量のアスリート体型の持ち主で、それが彼のスピードとパワーを生み出しているのだろう。

大学に入ってからの成長はパワーだけではない。いわゆる一足一刀の間合いからジリジリと攻め合って勝負する場面が増えた。オーソドックスな正剣では無いが、普通に構え合った状態のみで勝負してもかなり強いのは間違いない。ただ彼の場合、引き技が抜群に上手く(警察含めて日本一なのでは?)、打ち合いに持ち込んでも最強なので、引き技、中間、技の切れ目、遠間など、「ここなら勝てる」というところを判断し、勝負するところを相手によって変えながら戦っているようだ。

そして、技の豊富さも素晴らしい。彼も内村良一選手同様、一つの技に頼るタイプではなく、相手によって効果的な技を判断し、一本にする。ようするに「何でも打てる」タイプなのだ。上の動画をそれぞれ見てほしいが、実に多種多様な技を決めている。特に上から3つ目の動画を見てほしい。一本になったのは「メン抜き逆ドウ」という大技である。こんな技まで打てる選手はなかないない。相手がメンに来る場面一つとっても、出ゴテ・抜きドウ・返しドウ・そして、抜き逆ドウまで網羅しているのだ。恐るべき技の豊富さである。

試合運びに関しても、その抜群の身体能力と多彩な技を活かし、試合を組み立てる。試合序盤は相手の様子をしっかりと伺うタイプだ。序盤はある程度リスクの少ない引き技、コテ技、連打等で流れを作りつつ、相手の状態を伺う。とは言え、それらの技もキレキレなので、ここまでの段階で一本にすることも多い。中盤以降は数ある持ち技の中から決まり手となる技を絞っていき、攻めを構築するといった戦い方だ。相手からしてみたらかなり厳しい試合を強いられるだろう。まず、引き技を封じるのが難しく、スピードがあるから捉えにくい。そして、技が豊富すぎて何を打ってくるのか分からない。間合いに関しても遠間からでもスコーンと飛んでくるし、中間は出るも引くも自由自在、鍔迫り合いは最強なのだ。これは厳しい。

ともあれ、これからも私は彼の剣道を追っていきたい。この2年の成長を見てみると、まだまだ彼は伸びていくだろう。楽しみだ。先日の関東学生新人戦(団体戦)の中大優勝時のインタビューで「団体戦での優勝は個人戦の100倍嬉しいです!」と彼は言っていた。個人戦より団体戦のほうが大事だと公言するその人間性も素晴らしいではないか。次はぜひとも全日本学生団体戦で中大を優勝させてほしい。