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大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

エグ過ぎ。竹ノ内佑也のシンプル引きメンは基本かつ終着駅

剣道の試合において、鍔迫り合いの状態が試合時間の7〜8割を占めるのをご存知だろうか。これは、私の分析によれば小学生や中学生の試合であろうと全日本選手権の試合であろうと変わりはしない。つまり、レベルが上っても鍔迫り合いをどう制すかは試合の勝敗を大きく左右するということだ。鍔迫り合いを嫌うおじいさん・おっさん剣士の意見はさておき、今回は鍔迫り合いからの引き技の基本となる引きメンについて述べていこう。

 

解説の前にこちらの動画を見てほしい。究極の引きメンの動画を私は目の当たりにした。皆さんはどう感じるだろうか。↓

www.youtube.com

4:00〜の場面

 

www.youtube.com

6:15〜の場面

これらの動画は2015年全日本学生団体戦準決勝での筑波大VS中央大の大将戦・代表戦の動画だ。どちらとも竹ノ内佑也VS梅ケ谷翔。結果としては大将戦・代表戦ともに竹ノ内選手が引きメンを決めて勝利した。

いやいや、何ですかこの引きメンは。見える人いるんすか。

私はこれを見て、時限爆弾が爆発する瞬間を連想した。「(無)・・・・・・ボンッッ!!!」まさに「静から動」。体内のエネルギーを反動をつけず一瞬にして竹刀の先端に乗せるその技術は脅威という他ない。

とは言えこの引きメン、基本と言えば基本の引きメンなのである。この引きメンのどこを真似するべきか、以下に解説する。彼のような超人的な速さは求めなくてよいので、キレがあって一瞬で打てる引きメンを身につけてほしい。

 

では、彼の引きメンの解説。

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逆交差から

 

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両者左に旋回

 

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距離に注目。梅ケ谷選手の竹刀が竹ノ内選手の面垂れにかかっている。鍔迫り合いから中間に差し掛かる微妙な距離。「この距離ならギリギリ大丈夫」と梅ケ谷選手は感じていたかもしれない

 

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しかし、竹ノ内選手の引きメンが発動(技の起こりが全く無く、一瞬の一瞬のまたまた一瞬の出来事である)

 

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ほとんど竹刀を振りかぶってない。面と竹刀の間は15センチぐらいか。これで打てる凄さは剣道をやっている人なら誰でも分かるだろう

 

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梅ヶ谷選手の面を捉える瞬間。腕を伸ばし切らない状態で打突部位を捉える技術にも注目

 

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一本となる。ここまで0コンマ何秒だろう。

 

2つ目の引きメン

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通常の鍔迫り合いの状態から

 

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少しだけ距離を取ろうとする竹ノ内選手

 

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ほんのもう少しだけ離れた瞬間、

 

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引きメン発動。これだけしか振りかぶってない。むしろ、「振りかぶる」という動作が無いに等しい

 

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少し深いが、審判にそれが分かるはずもないほど速い

 

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一本となる

 

彼の引きメンから何を学ぶか。

まずは、「振りかぶらないで打つ」ということだ。一瞬で「ドンッ!」というイメージで打てるかどうか。「1,2」ではなく、「1」で打てるかどうか。「振りかぶる」引きメンは「1,2」のリズムになってしまう(1で振りかぶり、2で打つ)。これでは1の瞬間に相手は「来るな」と分かるので、すぐに防御されてしまう。目指すべきは爆弾が爆発するように「1」でドン、と打つ引きメンだ。

この「振りかぶる」という動作をもう少し細かく説明する。鍔迫り合いのとき、床と竹刀の角度は大体60〜90度ぐらいだと思う。引きメンを打つ際、これが120度とかに一瞬でもなることが「振りかぶる」ことである。これを90度以内に抑えて打てるようであれば、「振りかぶらず一瞬で打てる引きメン」である。上の写真を見てもらえばわかると思うが、竹之内選手は1つ目の引きメンが70度ぐらい、2つ目の引きメンが80度ぐらいで打っている。70度とかは超人の域なので、まずは90度以内を目指そう。これ、言っていることは単純だが、かな〜り難度は高い。まず、振りかぶらず一瞬で剣先に威力を乗せるための体の使い方が難しい。背中を瞬間的に後ろに反らせて、その瞬間には剣先が相手の面を捉えているイメージだ。手首のスナップを使ったら間違いなく90度以上になるので、使わず、スナップの替わりに左拳を自分のアゴぐらいまで瞬間的にグッと引く(近づける)ことによって打つことになる(テコの原理のイメージ)。何千回もの練習が必要だろう。かつ、一瞬の技なので、上半身の瞬発力(筋力)もかなり必要とする。技術と体力の両輪があってこその技なのだ。

この引きメンの技術レベルは高校生の全国区レベルだ(それでも打てない選手も多い)。かなりレベルが高い。普通の町道場に通っているおじさん剣士などで打てる人はほぼいないだろう。だからといって「自分のレベルの技ではない」とあきらめるか、「これが打てたら高校全国区レベルだ」と思って練習するか、どちらを選ぶのが上達への近道か答えを言う必要もないだろう。

なお、この「振りかぶらない引きメン」がもし打てるようになれば、そこから派生するもう一つの引きメンも比較的たやすく習得することが出来る。次回、その引きメンについて述べる。

 

追記:この引きメン、【まっすぐ打つ・表から(右から)打つ・裏から(左から)打つ】の3パターンを使い分けることが出来れば、かなり試合で使える技となるので、練習すべし。