読むだけで強くなれる剣道ブログ

大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

剣道にセンスは必要か。

私は世間一般に使われる「センス」「才能」「天才」という言葉に腹が立っている。

例えば、あなたが初めてゴルフを習ったとしよう。インストラクターは最初にアドバイスを与える。「腰を〜〜して、手首は〜〜で」のように。そして、あなたはアドバイスに従って数打打つ。「ナイスショット!初めてにしてはいいですね!センスありますよ!」

 

アホか、と。こういうセリフを吐く人間というのはスポーツにおけるセンスというのが何たるかを全く理解していない。「教えたらすぐ出来る」とか「感覚が優れている」とかいうことを「センス」だと思っているのだろう。これに私は腹が立つ。サッカーでも野球でもスノーボードでもどんなスポーツにおいてもセンスという言葉が安易に使われすぎている。

剣道における「センス」とは、そのようなものとは全く別次元である。「すぐ出来るかどうか」とか「感覚が優れているかどうか」というのは単なる反復練習の量を左右するだけの問題であって、量をこなせば誰だってその領域に達することが出来るのである。例えば、「左足を継がない飛び込み面」が打てない部員が数名いたとする。習った初日から出来る人もいれば、数ヶ月かかる人もいるだろう。ただし、そういうのは全く問題ではないのだ。結局は練習すれば全員ができるようになるのだから。「左足を継がない飛び込み面」は打てるようになった、では次にどうする?どこを伸ばせる?と自分で自分の剣道を分析し、伸ばすべき部分をしっかり把握することのほうがはるかに重要だ。

剣道における「センス」とは「頭脳」である。剣道ほど頭をつかうスポーツはなかなかない。飛び込み面一つとっても、間合い・足の使い方・腰の入れ方・剣先までの力の伝え方・竹刀の振り幅・足の引きつけ・打突後の体の移動など、様々なエッセンスがそこには存在する。しかもそれは日常生活で使う動きではないので、ただ感覚的に練習しても全く向上していかない。それプラス、無数にある技の習得・間合い・駆け引き・試合運び・対戦相手をどう攻略するかなど、とにかく頭をフル回転で使うのが剣道という競技だ。

なので、あなたが「剣道を強くなりたい」「上達したい」と思っているなら、とにかく頭を使おう。剣道をしていない時間にも「コテ打ちはこうしたらもっと良くなるんじゃないかな」とか「あいつの弱点は何だろう」とか常に考えることだ。かつ、ぼんやり考えるだけでなく、その答えが出るまでとことん考えてほしい。答えが出ないときは疑問点を忘れないようにメモしておくのが良いだろう。

私はほとんど勉強せずに大学までスポーツ推薦で入った。そして就職して、会社にいる周りの人間はガッツリ大学まで勉強してきている人たちばかりという環境に置かれた。当初、「自分は彼らと比べたら頭はかなり悪いだろう」と思っていた。「頭は悪いから、剣道で学んだ人当たりの良さと上下関係などのマナーで勝負しよう」という考えの下、仕事に励んだ。ずっとそう思っていたのだが、数年たった今、それは全くの誤りだったことがわかる。正直言って、剣道で結果を残せた人というのは勉強だけやってきた人よりも頭がいいと思う。「どうやって自分の剣道を構築していくか」や「どうしたら勝てるか」をずっと考え続けて生きてきたからだ。私も、社内のちょっとしたテストなどは同僚と同じ時間勉強したら、大抵良い点数が取れるし、仕事の段取りや数字を出すことに関して劣っているとは思わない。考えてみると、大学のときの部員も、コミュニケーション能力とか言われたことが理解できるかとか、そういう部分に関してはかなり能力の高い奴らの集まりだったように思う。

間違ってほしくないのが、私は「勉強はしないほうが良い」と言っているわけではないということ。むしろ、勉強はしたほうが良い。おそらく、中学〜高校の間、自宅で毎日一時間勉強すればかなりいい大学に入れるだろう。勉強は効率良く人生を豊かにする最高の方法だ。それは剣道より圧倒的に難易度が低い。

結局、剣道をしているからといってそれが職業になる(警察官になる)とか、それで収入を得るとかいう人はごくわずかである。しかし、剣道を真剣にやることには非常に大きな価値がある。仕事に関しても「どうやったら結果を残すことができるか」緻密にプロセスを考え、試行錯誤し、自分のレベルを向上させる。剣道と全く同じだ。だから、とにかく剣道をやっているときは、一生懸命勝つために考えて、考えて、考え続けて、自分の剣道を高めてほしい。それは将来、必ず役に立つ。