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大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

出鼻技の基本。勝見洋介は剣道界のメイウェザー

 

出鼻技。いわゆる剣道の「カウンター」である。出頭の技、応じ技と言うこともある。ボクシングの世界でも最も華やかで見るものを魅了するのが「カウンター」だ。剣道においてもカウンターほど芸術を感じさせるものは無い。

 

今回紹介する選手は神奈川県警の勝見洋介選手だ。この選手は間違いなく日本一のカウンターマスターで、一本にする技のほとんどが相手の出鼻を打つ技だ。その究極とも言える出鼻技を解説しながら、出鼻技の理論をまとめていく。

まずは彼の動画をご覧頂きたい。↓

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この試合、あの竹ノ内選手に対しても完璧な出小手を決めて勝利した勝見選手(3:25〜)。彼の剣道、出鼻技を打つにあたっての基本中の基本であるのだが、構えが素晴らしい。特に彼の足。出るときも引くときも常に左足の踵を浮かせて、いつでも打てる体勢を作っている。「引いて、出る」というのを毛嫌いする指導者も多いのだが、彼のように引くときも「いつでも出れる」下半身を作れるのであれば、「引いて、相手が出てくるところ」を打つこともできる(言うのは簡単だが、これがなかなか難しい)。この試合においても、彼は一旦引いて、出小手を決めている(3:25〜)

出鼻の技の基本は、相手が「1・2」の「2」で打ってくるところに合わせる、という技術である。「1・2」というのは、例えば「詰めて・メン」「コテ・メン」「担いで・メン」などだ。これらの技はすべて「1・2」のリズムだ。「1・2」⇒「詰めて・メン」というリズムなのが分かるだろうか。

そして、これが一番重要なコツであるのだが、「1・2」の「2」に打ち始めるのではなく、「・」のところで打ち始めること。そうすれば必ず相手より先に打突することができる。この点について、勝見選手の技で説明する。↓

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両者構えた状態。

 

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竹ノ内選手が「担いで・メン」にくる。「1・2」の技だ。この瞬間はその「担いだ」、「1」の瞬間。

 

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竹ノ内選手が「担いだ後にメンに出ようとした瞬間」、まさに「1・2」の「・」の瞬間に完璧な出小手が決まる。手首が切り落とされるのではないかというくらい完璧に打突部位を捉えている。

 

もう一試合見てみよう。この試合でも彼は2本の出鼻技を決めて勝利している(本当に彼は出鼻技ばかり一本にする)。↓

www.youtube.com

1本目7:38〜 2本目8:25〜

 

1本目の解説↓

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両者構えた状態から、

 

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竹下選手が竹刀を上げながら一歩間合いを詰める。(この瞬間ではまだ分からないが、竹下選手が狙っていたのは「上を攻めて・コテ」。つまり、「竹刀を上げながら詰めて・コテ」=「1・2」。この写真は「1」の瞬間)

 

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竹下選手が「1」から「2」に転じようとした瞬間、つまり「・」の瞬間、勝見選手は脳天を叩き割るようなメンを炸裂させた。

 

2本目も「1・2」の理論は同じ。↓

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両者構えた状態から、

 

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竹下選手が「詰める」。つまり、「1・2」の「1」の瞬間。勝見選手の左足に注目。完全に「活きている」。チーターが獲物に襲いかかるときの足(笑)ですね。

 

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「1・2」の「・」の瞬間、勝見選手のメンが炸裂。実は打突部位は捉えてないが、タイミングがあまりにも素晴らしく、一本となった。ちなみに、竹下選手の技は「詰めて・コテ」だったのだが、勝見選手のメンが速かった。少しでも遅れると逆にコテの餌食になってしまうので、「2」ではなく、「・」で打てるかどうかが生死を分ける。まさに出鼻の技というのはコンマ何秒の攻防なのである。

 

ということで、以上で「出鼻技の基本」とする。ちなみに、「左足を継がない」というのが基本中の基本と何度も言っている理由もこれで納得できたのではないだろうか。

kendo.hatenablog.com

「左足を継ぐ」というのは一番分かりやすい「1・2」となってしまうので、出小手・抜き胴打ってくださいと言っているようなものだ。また、勝見選手のように「引いた状態」からでも打てるためにも「左足を継がずに打つ」というのが基本となるのである。