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相面を制すテクニック 九州学院・星子選手、梶谷選手は"狙って"打っている

以前、出鼻技の基本について記事を書いたが、今回は「相面(出鼻面、出頭の面)」に絞って説明したい。

まず、最初に知ってほしいのが、高いレベルにある選手は「普通の飛び込み面」と「"狙った"相面」とで打ち方を分けているということ。

 

まず、飛び込みメンの基本と出鼻技の基本の記事を読んでない人は先に読んでほしい。その理論を理解していないと正直、この記事を読んでも意味が無いと思う。↓

www.yomuken.net

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相面というのは、2つのシチュエーションがある。一つは、「両者が飛び込み面を打った」という状況。もう一つは、「相手が出てくるところに狙ってメンを打った」という状況である。今回紹介するのは後者のパターン。つまり、完全にこちらが"狙って"相面を制す打ち方である。

この技を紹介するにあたってピッタリな動画が先日行われたH28全国選抜の決勝である。↓

www.youtube.com

1:35〜梶谷選手の相面、10:00〜星子選手の相面

 

この場面を静止画で切り取ってみよう。↓

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梶谷選手が引き技を打って両者の間合いが離れた後、一歩二歩と両者詰め寄る

 

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そして、完全に一足一刀の間合いに入った瞬間、

 

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両者メンに跳ぶ。相面を制したのは梶谷選手。大会随一と言ってもいい跳躍力を誇る梶谷選手であるが、この場面では相手選手より跳んでない点に注目。前に大きく跳ばないことによって、踏み込みの右足が相手より先に着床している。

また、引き技から詰め寄ってのこの相打ち、「1・2」のリズムになりやすい(上のリンク、「出鼻技の基本」の記事を読んでもらえばと思う)。梶谷選手にとっては合わせやすいタイミングだっただろう。

 

続いて、星子選手の相面↓

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一足一刀より少し遠間から

 

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相手選手がグイッと右足で思い切って間合いを詰める

 

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相手選手が左足を継いで「発射オーライ」となる。これも左足を継ぐ、「1・2」のリズム(「出鼻技の基本」の記事参照)。一方、万全の「足」で待ち構える星子選手

 

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次の瞬間には両者メンに出ていた。しっかり"跳んだ"相手選手に比べて、星子選手は完全な「その場メン」。

 

間違いなく、この2つの相面は彼らが完全に"狙って"打ったメンである。相手選手は「通常の飛び込み面」を打った。一方、梶谷・星子両選手は普通の飛び込み面とは打ち方を変え、相手の出頭に先に打ち込むための「相面仕様のメン」を放ったのだ。

この、「相面仕様の面」であるが、最大のポイントは「跳ばないこと」である。自分が跳ばなくても相手が打ってくる(近づいてくる)のだから、その場で打っても十分届く。完全な「その場メン」で良い。構図としては、相手=飛び込み面(跳ぶ!)VS自分=その場メン、という形になるが、「速さ」という点においては「その場メン」の方が完全に有利だ。特に踏み込みの足。普通の飛び込み面の踏み込みの右足と「その場メン」のそれを比べてみたらすぐに分かるだろう。距離がない分、おそらく半分ぐらいの時間で踏み込める(着床する)はずだ。相手の足がまだ空中にあるうちに自分は「ドンッ」と踏み込んでいる状態を実現できる。竹刀の動きも下半身と連動するので、竹刀が打突部位を捉える速さもこれによってアドバンテージを得る。

次のポイントは「竹刀を振らないこと」だ。「当てる」「刺す」ぐらいの感覚で良い。いわゆる出鼻技の場合、打突の強さはまったく要らない。ただ相手より先に触れるだけで良い。振らずに「触れる」という感覚を持つだけで、竹刀が打突部位に到達する時間を短縮させるのだ。それは0コンマ何秒の物凄く短い時間ではあるが、それこそが相打ちや出鼻技を制するのである。

 このように、同じようなメン打ちでも全く別物であるという事実を知ってもらえたらと思う。そして、それは自分が理屈を把握していないと絶対打てないし練習のしようもない。大前提の「左足を継がないメン」を打てるのは最低条件として(打てない人は記事を参照してほしい)、練習時のポイントは、

1.その場で打つ

2.相手より先に踏み込む(相手の踏み込みの右足の着床より早く着床)

3.竹刀を振らず、触れるだけ

これだけの意識を持つだけで良い。難易度はそこそこ高い。高校生で例えたら、都道府県大会上位レベルの技だ。とは言え、左足を継がずに鋭い飛び込みメンが打てる人はすぐに自分のものにできるだろう。