読むだけで強くなれる剣道ブログ

大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

あいつに勝つために

前回の記事で、「中学三年生の息子がいます。もうすぐ最後の大会です。」とのコメントを頂いた。そうなのだ。もう5月。中学生や高校生にとって最大の目標である中体連、インハイ予選まであとわずか。ここに全てを賭けている剣士(またはその親御様)も大勢いらっしゃるだろう。そこで今回は残りわずかなこの期間に何をすべきか、提案したい。

私が思う、この時期にやるべきこと。それは多くの剣士が見落としがちなことでもあるのだが、「対戦相手の分析」である。現在は録画機器が安価になり、高画質化・コンパクト化したため、自分の剣道の試合の動画をお持ちの方が大半だと思う。そしておそらく、最後の大会で対戦するであろうライバルの試合の動画もその中にあるではないだろうか。対戦する可能性の高い相手、脅威となる相手、負けたくない相手、彼らの動画を何十回もテープが擦り切れるほど(時代的には"SDカードがぶっ壊れるほど"?)見て分析してほしい。もし、動画のデータを友人が持っていたり、その親御さんが持っていたりする場合は借りてデータを移しておくべきだ。または、チームの皆と「鑑賞会」を開いても良いだろう。

剣道家の中には「対戦相手を意識せず、自分の剣道に集中すべき」と言う人がいる。はっきり言ってそれは誤りだ。ボクサーは対戦相手のビデオを何百回も見て相手の癖を完全に頭の中にインプットし、有効な体の動きとパンチを体に染み込ませた上でリングに上がる。野球でもピッチャーは打者に応じて配球を変えるし、サッカーでも相手チームによってフォーメーションや戦術を臨機応変に変えるのが当たり前だ。剣道だけ例外であるわけがない。「自分の剣道に集中」と言うのであれば、相手の剣道がしっかり分かっているときのほうが集中できる。あれこれと余計な事を考えずに的を絞って「集中」して戦えるからだ。全日本選手権優勝者などもそのような事を言うが、彼らは各々がどのような剣道をするか、全て「筒抜け」なのだ。警察の大会や練習試合、国体、都道府県大会etc・・・。自分も相手も研究して、されて、完全に頭の中に入った状態で戦っているのである。

そして、その「分析」であるが、「こいつとこいつとこいつと・・・」と数えていったら、意外にも10人ぐらいで収まるのではないだろうか。それぐらいの人数ならそいつらを丸裸にできる。わくわくしてこないだろうか。「傾向と対策」と「自分の剣道」をすり合わせる。これこそが剣道の一番面白いところだ。

分析のポイントは実は2つだけ。「打てそうなところ」と「打たれそうなところ」を見つけるだけだ。忘れないようにスマホでもメモ用紙でもよいので、必ず記録を残しておこう。

「打てそうなところ」は多ければ多いほどよい(当たり前だが笑)。1つだけでも絶大なアドバンテージを得るのだが、3つ探せれば勝利はほぼ確実だろう。「相手の防御の癖」「主に何を打ってくるのか(そこにカウンターを合わせるため)」「引き技で打てそうなところ」「打てそうな間合い」などだ。特に「防御の癖」は絶対に頭に入れておいたほうが良い。どう攻めたらどう守る相手なのか。「こいつは中途半端に手元を上げてよけるからこの角度でコテを・・」「こいつは引き技のあとはガッチリよけるから逆胴!」というように考えるわけだ。わくわくしてこないか。試合開始前から「これなら一本取れる」という技を完全に頭に入れた状態で試合に臨むのだ。そして、その技が一本にならなくてもあなたは依然として有利な状況にいる。次はその技の「対」を攻めたらよい。相手の弱点を攻めたことで、剣道のセオリーである「上・下・表・裏」の攻めが活きてくるのである。

また、「打たれそうなところ」に関しても分析すべきだ。しっかり分析すれば、「あいつのメン、すごいよね」というような「得意技」もしっかり防げるというのが分かるだろう。「あいつのメン、速いけど実は全然跳んでないじゃん。ちょっと引けば当たらないよ」「あいつ、コテ得意だけど近間で手元上げなかったら絶対打たれないな。なおかつ相小手面2,3回見せといたら万全だな」というように。技には必ず癖がある。どんなときにどんな技を出すのか、どんなときに危険なのか、それが頭に入っていたら打たれる可能性はグッと下がるだろう。そして、打たれなかったら負けることはないのだ。

以上、私がオススメする「対戦相手の分析」だ。しっかり分析すれば、逆に頭の中はスッキリし、自信を持って試合に臨めるだろう。そしてこれ、実は普段の剣道生活の中でも日常的に行うべきことだ。分析しているうちに、「この技が有効!」「あっ・・でもオレ打てない・・」というように自分の剣道を見つめるきっかけにもなる。宮本武蔵が「自分を知り、相手を知れば、百戦も危うからず」と述べているが、まさにその通りだと思う。