読むだけで強くなれる剣道ブログ

大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

剣風と竹刀

先日、「竹刀選びに関してよかったら記事をお願いします」とコメントを頂いた。コメントを頂くことが何よりもモチベーションになるので、再優先だ。早速この点に関して書いていきたい。

 

竹刀選びで重視すべきは「柄の長さ」と「重心」の二つ。

 

まずは柄の長さに関して。これは長い方が右手が前に出る形になるので、「テコの原理」を使った技が打ちやすい。応じ技、返し技、引き技、フェイント技などだ。特に小手技はコンパクトに素早く振る必要があるので、長い方が絶対に打ちやすい。

「柄長」はメリットばかりのようだが、当然デメリットもある。飛び込み面や突きなど、遠間から打つ技が届きにくいのだ(右手の握りの位置を変え、柄を余らせて面を打つ技術もあるが)。柄の長さの差など、あって拳一つ分ぐらいなのだが、この差は非常に大きい。面打ちが面金に当たるか、面布団に届くか、というのを想像してもらえば分かりやすいと思う。それプラス、柄が長すぎるとどうしても飛び込み面や突きのときに体が左に開きがちになる。その点でも「届きにくい」という感覚を覚えるのだろう。そして、「柄長」最大のデメリットは、剣道がこじんまりとしてしまう点だ。特に小手技を打ちやすいので、それに頼りきりになってしまうのだ。小手技は大事なのだが、それは「上(面、突き)」を攻めることによって活きてくる。「一つの技に頼る」というのは剣道のスケールを小さくすることにほかならないのだ(柄短で大技に頼る人も同様。ジーっと構えているだけのオッサン剣士に多い)。

まとめると、「小技が効く柄長」「大技には柄短」となる。

 

次に重心に関して。これは竹刀の重心が「手元寄り」(=先軽)にあるか「剣先寄り」(=先重)にあるか、というバランスのことである。先軽は竹刀全体が軽く感じられ、速く振りやすい。特に出小手などは非常に打ちやすく感じるはずだ。出小手に限らずどんな技であれ、「竹刀を速く振る」というのは大切なことで、このメリットにより、打突が部位を捉える機会も多くなるだろう。そして何より、非力な剣士でも扱いやすいのが先軽の竹刀だ。

反面、先軽の場合、打突は軽くなってしまう。軽い打突というのは審判から見て「音」で容易に判断できるものなので、当たったとしても一本にならない機会も多くなるだろう。特に強い打突が要求される面技は厳しくなる。

ちなみに、打突の強さがなぜ大事かというと、審判は戦っている二人の打突の強さを比較しているからだ。「相手の打突と比べて、十分な打ちの強さか」というところを一本の判断材料にしているのだ。「当たっているのに全然一本にならない」という試合を誰もが見たことがあるだろう。その原因は体のキレであったり打突の機会であったり色々とあるのだが、その一つは「打突の強さの比較」がある。一方が強力な打突を有し、もう一方が貧弱な打突しかできない場合、後者がカウンター以外で一本を奪うのはかなり厳しいということになる。

まとめると、「速く振れるけれど、打ちが軽くなる先軽」「速く振れないけれど、打ちは重くなる先重」となる。

 

竹刀の種類であるが、「胴張り」の竹刀は柄の上の部分が膨らんでいて、そこに重心が集まるので先軽の竹刀が比較的多い(全部ではなく、バランス型のモデルも多くある)。それに対して、「直刀」はほぼ先重だ。

柄の太さに関してもモデルによって異なるので、手の大きさで判断すればよい。「太い方が突きやすい」という人もいるが、剣道には色々な技があるので、よほど突き技に頼るタイプでない限り、握りやすい太さ=振りやすい太さを選ぶべきだ。

また、柄の形で「小判型」という種類があるが、はっきり言っておすすめできない。理由の一つは、上下と左右の竹が別々だからだ。つまり、練習で割れてしまったら組み直して使うことができない、非経済的な竹刀なのだ。「刃筋を意識しやすい」という刷り込みもあるが、実は現代剣道では刃筋が立っていない打突はたくさんあり、ちゃんと一本になっている(出小手、引き面、返し面などで瞬間的にそうなる場合がある)。ルールでは一本ではないが、旗が上がりさえすればよい(否定する人もいると思うが)。技のバリエーションを減らさないという点でも、小判形は避けた方がよいだろう。

 

私個人の話になるのだが、最終的にはバランスのとれた竹刀を使っていた。柄は長くもなく短くもない、先軽でもなく先重でもない竹刀。そこに落ち着いた(ただし、手が小さいので柄が細いタイプを選んでいた)。これは私自身が「何でも打てる」「臨機応変に試合を組み立てられる」剣風を目指していたからであろう。どこかに偏れば私はダメだったのだ。私の仲間達も結局は「バランス型」に行き着いた者が大半だった。

 なので、おすすめするとしたら「バランス型」の竹刀を推したい。ただし、それはその人の剣道自体も「バランス型」を目指している場合(当然、自分なりに考えてやるのが一番大切なので、目指す方向性が違う人は竹刀も違ってよい)。

そして、「バランス型」を推すのは「ウィークポイントを明確にする」という理由もある。

柄長or先軽の竹刀を使っている人=筋力が無いor遠間からの技が打てない

柄短or先重を使っている人=スピードが無いor小技が打てない

というパターンが多い。自分がどれかに当てはまる場合は改善が必要で、対戦相手分析にもこれは使えるだろう。

 

そして、全日本選手権を見ても、長所を持ちつつ弱点が少ない選手がやはり強い。このブログを見ている人が、何か抜群に飛び抜けているものを持っていても、そこはそこで伸ばしつつ、バランスのとれた剣道を目指すべきだと私は思う。それが勝利に一番近い道なのだから。

竹刀を通して自分の剣道を見つめていただけたら幸いだ。