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山田凌平の"刺すような"シンプル小手

先日の日曜日、全日本学生選手権が行われ、明治大学の山田凌平選手が優勝した。私イチオシの(みんなイチオシか?)梅ケ谷選手はベスト8という結果に終わった(この結果では本人は納得しないだろうが、しっかり上まで勝ち上がるのがすごい)。

試合は結構youtubeにあがっていて、決勝の動画はフルHD画質で見れる。素晴らしい時代になったものだ。

www.youtube.com

決勝の試合は貝塚選手が早い時間に一本先取。そこから山田選手が2本取り返して逆転勝利を収める面白い試合であった(開始から終了まで、ぜひ見てほしい)。

 

そして、今回取り上げるのは決勝で山田選手が決めた2本の小手(7:20〜、7:30〜)。

小手は以前の記事で紹介した小手打ちとほぼ一緒。詰めて・小手。これだけ。

コテの基本「詰めて、コテ」。高鍋、内村、畠中選手等の動画を参考に理論をまとめる - 読むだけで強くなれる剣道ブログ

それを高度に磨き上げたのが「山田の刺し小手」である。

「詰めて・小手」こんなにシンプルな技がなぜ脅威となるのか。

 

この2本の小手を静止画で解説していく。まずは一本目(7:20〜)

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鍔迫り合いを解消したこの場面から一連の攻めがスタート。ここから山田選手はツッ・ツッ・ツッと間合いを詰めていく。シンプルな「詰める」攻めでプレッシャーをかける。一方、貝塚選手はそれに応じるように下がりながら間合いをキープしようとする。

 

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この間合いまで入った山田選手。貝塚選手もずっと下がり続ける訳にはいかないので、このあたりで対応しようとしたはずだ。

 

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竹刀をグッと下方向に向けつつ、この近間から更に右足を出す強烈なプレッシャー。ここからは自由自在。下を攻めて上に行くのか?それとも下を攻めて更に下を打つのか?

 

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打突発動。

 

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小手を捉える。

「詰めながら下を攻めて小手」。非常にシンプルな技だが、この中には非常に高度な技術が詰まっている。

何より、ほとんど竹刀を振っていないこと。刺すような小手だ。静止画で見ても振り幅はたったこれだけ。しかも近間から冴えのある打突を繰り出すのは本当に難しい。

貝塚選手が小手をケアしないような防御体勢を作ったのも、「この状態なら小手は打たれても一本にはならない」という判断があったのかもしれない(当然、ほんの一瞬の出来事であるから、理屈で考えたのではないだろう。「この状態なら小手は一本にはならない」という感覚が体に染み付いていたのかも)。

しかし、それを上回る技術を山田選手は有していたのだ。

 

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打突後の体の寄せも見逃せない。ここまで寄せらせたら相小手面も返し面も絶対に打てない。

 

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しっかり寄せて後打ちを許さない。

 

 

2本目(7:30〜)

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「勝負!」からスタート。ここもシンプルに間合いを詰める山田選手。

 

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ここまで来ればプレッシャーは相当なもの。そして、グッとこらえて相手の反応を伺う。

 

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フッと一瞬、上を見せる。

 

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「入って来るな!」とばかりに牽制の小手を放つ貝塚選手。しかし山田選手はしっかりと動きを見定め、いなしている。次の貝塚選手の動きは?連続技で打って出るか、打突後すぐさま防御するかのどちらかだ。

 

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防御の体勢をとった貝塚選手。ここからでも打突に転じることもできるが・・・山田選手は万全の体勢。

 

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貝塚選手は一旦防御の体勢を取り、そこから再び打突に転じる。しかし、山田選手は横から防御していた相手の竹刀に沿うように小手を放つ。

 

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きれいに小手を捉える。

この場面では横から小手を狙うのがやはり正解。相手がそのまま防御の体勢をとり続けていても、角度的に小手を捉えていたはずだ。また、実際の場面のように、そこから相手が打突に転じても、打突時は必ず一瞬手元が空く。そこに小手が決まるはずだ。

流れとしては、「圧して、圧して、グッとこらえて、ドンピシャのタイミングで小手」。「詰める」という超基本の攻めなのだが、突き詰めればここまで脅威の攻めとなるのである。

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打突後はすぐに寄せる。ここでもしっかり徹底されている。

 

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相手にくっつきながら小手のアピール。旗三本。

 

 

解説は以上。

「横からの小手」など、難しいところもあるが、攻め自体は非常にシンプルだ。誰でも真似できるところがあると思う。

・小手を狙うときは近間までしっかり詰めてプレッシャーをかける。

・竹刀を振らずに「刺す」。

・打突後はすぐさま寄せる。

これだけでも出来たらかなりの武器になるだろう。

 

具体的な打ち方は以前の記事にも書いているので参考にして下さい。

www.yomuken.net