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大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

抜き胴・返し胴の打ち方は竹ノ内佑也に学べ

久しぶりの技解説シリーズ、今回は抜き胴と返し胴を取り上げようと思う。

まだ打てない初心者の方にも分かりやすく、一つ一つの動作を細かく解説していきたい。

 

参考の動画として挙げるのはやはり、この男。竹ノ内佑也である。私は彼の返し胴を見た瞬間に「モノが違う」と感じた。とにかく動画を見てほしい(特に2つ目の返し胴!)。

www.youtube.com

2:40〜 抜き胴

5:25〜 返し胴(これは激ヤバ!)

 

さて、それでは一本目の抜き胴の静止画を見つつ、打ち方を分析してみよう。

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(左が竹ノ内選手)構えた状態から・・・

 

f:id:Bekon:20160825215607p:plain右足をグイッと前に出してプレッシャーを掛ける。攻め気を感じた相手は打って出る。

この場面が抜き胴・返し胴の最大のポイント(とても地味なところであるが)!

抜き胴・返し胴はこの静止画のように、右足を前に出して足幅を広めに取らないと絶対に打てない(普通に構えている状態の足幅の広さであれば、棒立ちで胴を切る形になってしまうので、竹刀がうまく抜けず、ぎこちなくなってしまう)。右足は半歩〜一歩ぐらい前に出すイメージを持っておけばよいだろう。

この動画の場面では、竹ノ内選手が右足を前に出したと同時に相手選手が面を打ってきたわけであるが、このように理想的に相手を引き出すのはなかなか難しい。右足を出すのはもう少し遅れてもよい。「来た!」と確認したら同時に右足をスッと前に出す、という形でもよいだろう。

 

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抜き胴・逆胴の軌道の最初の部分。

この場面のポイントは2つ。

まず、腰を少し落として、上体を右斜め前に入れること(赤い矢印参照)。この後、右に抜けていくわけであるから、相手の面を打たせないという意味でも、上体を右斜め前に入れるのが基本である。かつ、顔も少し右に傾ければ絶対に面は打たれない。

抜き胴・返し胴を覚え始めの人は「面を打たれるのが恐い」と言う(私もそう思った記憶がある)が、それは体を右斜め前に入れきれておらず、相手の面打ちの軌道上に居てしまっているから。考えたら分かると思うが、飛び込み面なんて、横に20センチずれたら絶対当たらない。当てさせないのは実に簡単だ。横にスッと動いてやればいいのだ。この「かわす」動作と「胴を切る」動作を同時に行うのが抜き胴・返し胴だと思ってもらえばよい。とにかく、「右斜め前!」と意識すること。

次のポイントは竹刀の位置。抜き胴でも、竹ノ内選手のように必ず自分の面を覆うところまで竹刀をもってくること。抜き胴や返し胴を狙う際に恐いのはフェイント。この面打ちがフェイントでタイミングをずらされたら・・・。結構危険である。そのときにもしっかりディフェンスするために自分の面を守る、というのが理由の一つ。

そしてもう一つの理由として、胴打ちは「上から下へ」打つ(切る)ものであるので、竹刀を上にもってきておいたほうが打ちやすいから。「左上から右下へ、45度で」と意識したら打ちやすく、確実に胴をとらえられる。

この2つのポイントを念頭に考えてみたら分かると思うが、抜き胴と返し胴というのは、実は「打ち分け」をしなくて良い。「打ち方」は全く同じだからだ。

よく、「返し胴はできるけれど、抜き胴はできない」という少年剣士がいるが、彼らは「相手の面打ちが自分の竹刀にパチンと当たった」のを確認して胴を打っている。そんな確認(?)なんて要らない。先に述べたように、正しく体を動かせていれば相手の面打ちは絶対に当たらないのだから(反応がある程度遅れてしまったとしても)、「(打って)来た!」というのを察知した瞬間に一連のモーションに入れば良いのである。

つまり、相手の面打ちに対して、こちらが速く反応できていれば「抜き胴」という結果になり、少し遅れれば「返し胴」という結果になるのである(上の竹ノ内選手も「返し胴」に見えるが、速く反応できていたので結果的には「抜き胴」となった)。

 

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 上から下へ、きれいに打っている。体を左前にしっかり入れているので、相手の飛び込み面は左にそれている。

 

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その場でしっかり切り抜く。

 

 

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次の一歩が大事!

胴を切り抜いたら、次は左足を「勇み足」の形でグイッと前に持ってくる。この一歩が打突後のキレを作る。

イメージとしては、前述した右足を前に出した形でバチーンと切り抜いて(足元は一定時間この形で止まる形になる)、打突後の一歩目は左足をグイーンと勇み足して、その後は走り去るように抜けていく。

特に打った後の一歩目は大事なので、ここはなるべく動画の0.25倍速で見てほしい(見てもらえればこの一歩の重要性が理解できると思う)。

なお、「回転胴」と言って、打った後にその場で右回りに一回転して残心、という打ち方もある。この打ち方は体の使い方としては実に合理的だと思う。だが、相手の脇を抜けていく基本通りの打ち方の方を私はおすすめする。理由として、まずは、抜けていくときに「ドオーーー!」と審判にアピールできる点だ。これにより、当たればほぼ一本にできる。あとは、回転胴を嫌う審判がいる点。回転胴は合理的な体の使い方ではあるが、「剣の理法に反する」という考えで、旗を上げるのを躊躇する審判がいる。私は回転胴でももちろん一本にするべきだと思っているのだが、審判がもしそうだったらどうにもならない。このような点を踏まえ、なるべく基本通りの打ち方を身につけるべきだと思う。

 

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 抜けるときは走り抜ける(通常のすり足ではなく、走る!)。かつ、「ドオーーー!」とアピールして旗を上げさせる。

これで完璧に一本になる。

 

 

では、2本目の返し胴の静止画で、打ち方を再確認してみよう。

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一足一刀の間合いから

 

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右足を一歩前に出す(抜き胴・返し胴を打つための足が準備完了)。それと同時に畠中選手は打って出る。

 

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体を右斜め前に入れる。これにより、もし、反応が遅れてしまっていても面は打たれなかっただろう。

 

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 上から下へ、きれいに返す。

 

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しっかり切り抜く。

 

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打突後の一歩目は左足を勇み足の形でグイーンと抜ける。この一歩でこれだけの距離が出る。

 

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走り抜けて残心。旗三本。

一本目は抜き胴、二本目は返し胴なのだが、打突の流れは全く一緒なのが確認できたと思う。基本通りの完璧な打突だ。

ちなみに、二本目の返し胴は通常再生で見たら、動作が全く確認できないぐらいの恐ろしい速さだ。この返し胴はメチャクチャ高度だ。

すごいのはその反応速度。面を打った畠中選手は通常の飛び込み面ではない「その場メン」を打っている。その場メンとは相手が間合いを詰めてきたり、打突の出鼻に合わせる高速の面打ちだ(こちらの記事参照↓)。

相面を制すテクニック 九州学院・星子選手、梶谷選手は"狙って"打っている - 読むだけで強くなれる剣道ブログ

もちろん、畠中選手は継ぎ足も全くしておらず、初動は全く見えない。打突のスピードも超高速。完璧な面打ちなのだ。

その面を返すとは・・・。

この男、怪物である。