読むだけで強くなれる剣道ブログ

大学まで全国区だった元剣士が剣道を理論的に分析するブログ。剣道の上達法、使える技をご紹介

世界選手権決勝について語る(VS韓国)

更新が遅くなって申し訳ないが、先月の世界大会について書いていきたい。

結果は皆さんも御存知のように日本の優勝。しかも韓国開催の完全アウェイ大会をしっかり制してくれた。世界大会について書くとなったらやはり韓国剣道について語ることになる。以前もこんな記事を書いたのだが、↓

韓国剣道を攻略する【完全版】 - 読むだけで強くなれる剣道ブログ

今大会はどうだったのか。先鋒戦から大将戦までじっくり深く分析していきたい。

 

動画はこちら↓

www.youtube.com

 

☆先鋒戦

この先鋒戦は5分の中に実に様々な事が起こっている。審判の微妙な匙加減でいくらでも結果は変わったと思う。

内容は五分。

2:00、最初の有効打は韓国。この打突、私は当たっていないのではないかと思う。動画は少し上からの視点で撮られているので、竹刀が面布団に当たっているのかどうかが分からない。もし当たっていたとしても、前田選手の防御越しに竹刀がしなって触れたに過ぎない。つまり、重い打突ではなかったということなので、私が審判なら旗は挙げない。

とは言え、やはり以前に投稿した記事にも散々書いているように、鍔迫り合いからの別れ際は脅威だ。早くもそこの攻防において日本は被弾したわけである。

そして2:45の場面、前田選手は一本を返す。この飛び込み面は完璧。

日本選手と韓国選手の飛び込み面は属性が異なる。前田選手の一本は”刺す”ような面。韓国選手の一本は”打ち下ろす”ような面である。もちろん、技として洗練されているのは日本の方だと思うが、韓国選手の打突は振りが大きく重い分、もし当たれば一本になる可能性が高い。また、上からくる分、その角度まで計算してディフェンスしなければならない。

この試合はこの後も見どころが続く。

3:10。前田選手の”刺す”ような超高速の面をなんと、胴に返す韓国選手。これは間一髪でミートせず。この一打に韓国選手の自力が見える。

そして5:10の場面・・・。これは正直、一本だと思う。

何度も何度も日本選手がやられている鍔迫り合いからの別れ際。この距離感から前に出ながら打ってくるのは我々日本人の発想にない。しかし・・・、これは打たれているのを認めざるを得ない。しかも頭をかち割るほどの威力。おそらく審判もここで打ってくるのは予想できず、反射的に旗を挙げられなかったのだと思う。

この先鋒戦、個人的レフェリーでは1-1の引き分け。

 

 

☆次鋒戦

9:43、星子選手が出小手で先制。

この出小手、確かに当たっていない感じがしたが、「タイミング的に旗は挙がるだろう」と思った。一応スローで確認しておこうと思い、見直してみて驚いた。この場面、実は韓国選手の面の方が先に当たっている。しかも星子選手の小手はやはり当たっていない。つまり、理屈で言えば星子選手に旗が挙がる要素は無く、韓国選手の方に旗が挙がるはずなのだ。

しかし、通常再生で見たら・・・自分が審判なら小手が当たっていないのは見えるので、旗は挙げない。とは言え、タイミングを評価して旗を挙げる審判もいるだろう。相手の面に旗を挙げる感じは全くしない。

おそらく、星子選手は打突後の体の捌き方、体から発する”俺のが一本だ”という空気を作るのが素晴らしく上手い。それがあれば、この一本のように”どっちの打突が先か”、”当たっているか”などの要素がかき消される場合もあるということだ。

一本先取後、星子選手の戦い方は実に無難。くっつくところはくっつく、離れる場合は思い切って離れる。韓国選手得意の”中途半端な間合い”を作らない。一切触れさせずに試合終了。

私が審判でも、1-0で星子選手の勝利だ(実際の一本が無くてもその後に一本は取れていただろう)。ちなみに私はまだこの選手が負けたところを見たことがない気がする。

 

☆中堅戦

13:47。何ですかこの面は。相手死んだんじゃないですか。竹ノ内選手が爆撃のような面で先制。

次に観てほしいのが14:45の引き技相打ちのシーン。これはぜひともスローで観てほしい。韓国選手が「右から崩して(押して)、引き胴」という結構ベタな引き技を放つ。この「右から崩して」の瞬間、竹ノ内という男は”あっ、この後引き胴来るな”と完全に読んでいる。だからそこにカウンターの引き面をかぶせにいく。惜しくも引き面はそれてしまったようだが、この瞬時の判断とそれを可能にする瞬発力は怪物そのものだ。

残りの時間、危なげなく試合を展開した竹ノ内選手は1-0で勝利。星子選手同様、ディフェンス力に優れた選手は見ていて安心感がある。

 

☆副将戦

この副将戦が引き分け以上で日本勝利となる。

20:20。西村選手が引き面で先制。勝利へのカウントダウンが始まるかに思われた。

しかし・・・20:45、相打ちは韓国選手へと旗が挙がる。これは・・・無い無い。明らかにどちらの打突も部位をそれている。なおかつ、タイミング的には西村選手の方に分がある。なので、韓国側に旗が挙がる要素が全く無い。これぐらいの打突なら当たっていないのをしっかり見てほしいのだが・・・。おそらく見えないのだろう。それと、僅かに、”ここで韓国に勝たせないと盛り上がりに欠ける”という心理状態が働いたのかもしれない。

そして21:48、韓国選手が引き面を決め、2-1で勝利。

個人的レフェリーでは1-1の引き分け。今大会、西村選手はそれほど調子が良くなかったように見える。調子が良くないときは攻撃とともに守りに関しても上手くいかなくなる。相手をしっかり見ながら打たせないことを第一に攻めるところは攻めなければ反則を貰い、旗も味方につかなくなる。

特に韓国戦では”中途半端な間合い”を避けつつ、こちら側の方がより攻めている印象を持たせるために、一足一刀での”溜め”、先に”作る”ところを見せる必要があると思う。

 

 

☆大将戦

嫌な流れだ・・・。

序盤戦、ヒヤリとする韓国選手の打突が続く。安藤選手は完全に”攻め”の剣道なので執拗に守るようなことはしない。

27:00、安藤選手が返し面で一本。これで日本の勝利はかなり固くなったのだが・・・。

27:30、韓国選手の引き面が一本となる。いやいやいや・・・。この判定は呆れるしかない・・・。こんな髪の毛も切れないような打突に・・・。

これが一本になるのだったら引き技のとき、ちょこんと面金に竹刀を当てて下がれば一本となる。審判の仕事は試合を盛り上げることではない。客観的にその打突が一本に値するのかどうか見極めることだ。

とにかく世界大会では残念ながら審判にそのような傾向があるということだ。

試合はその後、膠着状態が続き、引き分け。日本の勝利。

 

☆総括

今大会は明らかに日本の勝利である。しかも2-0もしくは3-0ぐらいの差で。

今大会、日本選手はしっかり対策が練れていたように思う。先鋒戦以降は韓国特有の”中途半端な間合い”を封じ続けた。

それと、嬉しかったのがフィジカル面でも今大会は韓国と対等以上に渡り合っていたところ。

この二点をしっかりクリアしていたので、終わってみれば完勝だったと思う。負ける要素がほとんどないのだ。

あえて言えば、攻めに関しては課題が残ると思う。一足一刀での駆け引きがほとんどなかった。

日本選手の一本は「技と技のつなぎの部分」や「後打ち」など、”際”の部分を執拗に狙い続けていた。それは洗練された技術ではある。特にギリギリの戦いではそういう部分が勝敗を分けることになり、技術の”洗練度”で上回る日本の作戦としては正しいと思う。

ただ、今後の大会でもし日本が苦戦するとすれば、”際”の部分を狙いすぎて、審判から「消極的」と見られ、旗が重くなるような試合展開である。

それを打破するための試合展開を考えてみた。

 

A (しっかりくっついた)鍔迫り合い

B 鍔迫り合いからの離れ際

C 一足一刀

 

A→日本選手は忘れていたように見えるが、ここは日本の方が強いのだ。完璧にくっついた状態から打てる技術を持つのは日本だけ。積極的に狙うべき。なるべくこちらから技を出す。(待っていたら「別れましょう、別れましょう」から韓国得意の中途半端な間合いに持ち込まれる)

 

B→ここはくっつくか離れるか、はっきり対応する。星子選手と竹ノ内選手が上手い対応をしていた。基本的には前に出るほうが有利なのでくっつく法を優先に。「またくっついてくるか」と思わせたら離れるのも容易になる。

 

C→ここはしっかり勝負してほしい。しっかり構えてほしい。各選手、ここでの攻防が一分ぐらいにでもなれば五人で五分。おそらく一、二本は日本選手なら取れると思う。今大会でも、前田選手と竹ノ内選手の飛び込み面に相手は反応できていない。かつ、前回大会では正代選手の小手技にも反応できていなかった。一足一刀での時間帯をどう増やすかが展開を楽にする鍵になると思う。

 

今考えられるのはこんなところです。

とにかく、私は日本代表選手をリスペクトします。ここまで練られた試合を見せてくれるとは・・・。しかも完全アウェイの空気の中・・・。脱帽です。

今後も勝ち続けてほしい!